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RFPでやりがちな失敗10選!システム導入を成功させる作成方法のポイント

RFP作成で必ず避けたい10の致命的失敗パターン

システム導入を成功させるための重要な第一歩となるRFP(提案依頼書)の作成。

しかし、多くの企業がRFP作成で同じような失敗を繰り返し、プロジェクトの迷走や予算オーバー、最悪の場合はプロジェクト中止に追い込まれているのが現実です。

今回は、RFP作成で必ず避けるべき10の失敗パターンを具体的な事例とともに解説し、あなたのシステム導入プロジェクトを成功に導く実践的なガイドをお届けします。

失敗パターン1:全関係者の要望を盛り込む「要望過多症候群」

よくある失敗事例

「公平性を保つため」という理由で、人事部、経理部、営業部、情報システム部など、すべての部署からの要望をRFPに盛り込んでしまうケースです。

A社では、人事システム刷新のRFPに「人事評価機能」「給与計算機能」「勤怠管理機能」「採用管理機能」「教育研修管理機能」「労務管理機能」など、15以上の機能要求を記載しました。

結果として、ベンダーからの見積もりは予想の3倍に膨れ上がり、プロジェクト期間も18ヶ月という長期間となってしまいました。

なぜこの失敗が起こるのか

すべての要望を取り入れようとすると、RFPは肥大化し、本来の目的が見えなくなります。

ベンダー側も「すべてに対応しなければならない」という認識になり、結果として高額で複雑なシステム提案しか出てこなくなってしまうのです。

正しい対策方法

要望には必ず優先順位をつけましょう。

「Must(必須)」「Want(希望)」「Nice to have(あれば良い)」の3段階で分類し、Must要件のみをRFPの中核に据えることが重要です。

失敗パターン2:予算感の欠如による「青天井見積もり」

よくある失敗事例

「まずは提案を見てから予算を決めよう」という考えで、RFPに予算の目安を一切記載しないケースです。

B社では、ERPシステム導入のRFPを5社に依頼したところ、最安値800万円から最高値8,000万円まで、実に10倍の差が生じました。

提案内容もバラバラで、比較検討が困難になり、結局RFPの再作成を余儀なくされました。

なぜこの失敗が起こるのか

予算感がないと、ベンダーは「安全策」として高めの見積もりを出すか、逆に「とりあえず受注したい」という理由で安すぎる見積もりを出すかの両極端になります。

適正な比較ができず、結果として最適なベンダー選定ができなくなってしまいます。

正しい対策方法

システム導入によって解決される問題の価値を金額換算し、その範囲内で予算の目安を設定しましょう。

「予算上限○○万円」ではなく「予算想定○○万円~○○万円」という幅を持たせた記載がおすすめです。

失敗パターン3:曖昧表現による「解釈違い地獄」

よくある失敗事例

「迅速に処理できること」「柔軟に対応できること」「使いやすいインターフェースであること」など、具体性のない表現でRFPを作成してしまうケースです。

C社では「迅速な承認フロー」という要求に対して、あるベンダーは「1日以内」、別のベンダーは「リアルタイム」、さらに別のベンダーは「3営業日以内」という解釈でそれぞれ提案してきました。

なぜこの失敗が起こるのか

曖昧な表現は、読み手によって解釈が変わります。

ベンダーは自社の製品に有利な解釈をする傾向があるため、結果として期待とは異なる提案が出てきてしまいます。

正しい対策方法

可能な限り数値や具体的な条件で要求を記載しましょう。

「迅速に」→「平均処理時間3秒以内で」「柔軟に」→「管理者権限で設定変更可能な」といった具体的な表現に置き換えることが重要です。

失敗パターン4:スコープ漏れによる「後出しじゃんけん」

よくある失敗事例

RFP作成時にシステム連携やデータ移行、運用保守などの重要な要素を見落とし、契約後に「追加でお願いします」となってしまうケースです。

D社では、販売管理システムのRFPで基幹機能のみを記載し、既存の会計システムとの連携について言及していませんでした。

契約後に連携が必要と判明し、追加で300万円の費用が発生しました。

なぜこの失敗が起こるのか

RFP作成者がシステム全体像を把握せず、目に見える機能部分のみに注目してしまうためです。

システム導入には、機能開発以外にも多くの作業が発生することを理解していないことが原因です。

正しい対策方法

RFP作成前に、現行システムとの関係性を整理した「システム構成図」を作成しましょう。

データの流れ、システム間連携、運用体制まで含めた全体像を把握してからRFPに反映させることが重要です。

失敗パターン5:責任分界点の不明確による「押し付け合い」

よくある失敗事例

「誰が何をどこまで責任を持つのか」が不明確なまま、RFPを作成してしまうケースです。

E社では、クラウドシステム導入で「システム障害時の対応」について、自社とベンダーのどちらが対応するのかを明記せず、実際に障害が発生した際に対応が遅れました。

なぜこの失敗が起こるのか

責任分界点が曖昧だと、問題発生時に「それは相手の責任」という押し付け合いが発生します。

特にクラウドサービスやパッケージシステムでは、ベンダーとユーザーの責任範囲が複雑になりがちです。

正しい対策方法

RACI図(Responsible, Accountable, Consulted, Informed)を活用して、各作業や責任の所在を明確にしましょう。

「システム運用はベンダー、データ管理はユーザー」など、具体的な分担をRFPに明記することが重要です。

失敗パターン6:無理難題な要求による「実現不可能スペック」

よくある失敗事例

「ID・パスワードの漏洩が絶対に発生しない仕組み」「永久保存データとして管理」「将来の法改正に無料で対応」など、技術的に不可能または非現実的な要求をRFPに記載するケースです。

F社では「システム障害ゼロの保証」を要求に含めたため、すべてのベンダーから「対応不可」という回答が返ってきました。

なぜこの失敗が起こるのか

システムの技術的制約や業界常識を理解せず、理想論だけでRFPを作成してしまうためです。

「完璧なシステム」への憧れが、現実的でない要求を生み出してしまいます。

正しい対策方法

技術的な要求については、事前にITコンサルタントやシステム専門家に相談しましょう。

「100%の保証」ではなく「99.9%の稼働率目標」など、現実的かつ測定可能な基準を設定することが重要です。

失敗パターン7:詳細化しすぎによる「仕様書もどき」

よくある失敗事例

RFPに画面レイアウトや詳細な処理フローまで記載し、1000行を超えるExcel要件表を添付してしまうケースです。

G社では、現行システムの機能を詳細に記載した結果、パッケージシステムの提案ができなくなり、すべてスクラッチ開発の高額提案となってしまいました。

なぜこの失敗が起こるのか

詳細すぎる要求は、ベンダーの提案の自由度を奪います。

パッケージシステムの標準機能を活用した効率的な提案ができなくなり、結果として高コストなソリューションしか選択肢がなくなってしまいます。

正しい対策方法

RFPでは「何を実現したいか」という目的を中心に記載し、「どのように実現するか」はベンダーの提案に委ねましょう。

業務フローよりも業務目標や成果物を重視した記載が重要です。

失敗パターン8:ベンダー都合を無視した「一方的スケジュール」

よくある失敗事例

「来月から開発開始、3ヶ月後にリリース」など、ベンダーの開発体制やリソース状況を無視した無理なスケジュールをRFPに記載するケースです。

H社では、年度末までに稼働させたいという理由で4ヶ月という短期間を要求したところ、品質の低い提案しか集まりませんでした。

なぜこの失敗が起こるのか

システム開発には、要件定義、設計、開発、テスト、移行など複数の工程があります。

各工程に必要な期間を無視したスケジュールでは、品質を犠牲にするか、高額なリソース投入が必要になります。

正しい対策方法

希望納期とともに「最短でどの程度の期間が必要か」をベンダーに確認しましょう。

品質を重視するなら余裕のあるスケジュール設定が、プロジェクト成功の鍵となります。

失敗パターン9:評価基準の不明確による「選定迷子」

よくある失敗事例

RFPで提案を求めておきながら、どのような基準で選定するかを明記していないケースです。

I社では「総合的に判断して選定します」とだけ記載した結果、価格、機能、実績のどれを重視すべきか分からず、選定会議が紛糾しました。

なぜこの失敗が起こるのか

評価基準が不明確だと、提案を受けた後の比較検討が困難になります。

関係者間で重視するポイントが異なり、主観的な判断に陥りやすくなってしまいます。

正しい対策方法

機能適合性、価格妥当性、ベンダー信頼性など、評価項目ごとに重み付けを設定しましょう。

「機能40%、価格30%、実績20%、提案力10%」など、数値化された評価基準をRFPに明記することが重要です。

失敗パターン10:社内調整不足による「要求変更地獄」

よくある失敗事例

RFP提出後に社内から「この機能も必要だった」「予算を半分にしてほしい」「スケジュールを前倒ししたい」など、次々と変更要求が出てくるケースです。

J社では、RFP提出後に経営陣から「クラウドではなくオンプレミスで」という方針変更があり、すべてのベンダーに再提案を依頼する事態となりました。

なぜこの失敗が起こるのか

RFP作成段階で社内の意見調整が不十分だと、後から様々な要求が噴出します。

特に経営層や現場部門の意見を十分に聞かずにRFPを作成すると、このような問題が発生しやすくなります。

正しい対策方法

RFP作成前に必ず社内説明会を開催し、関係者全員の合意を得ましょう。

経営層、現場部門、情報システム部門の三者が納得した内容でRFPを確定させることが重要です。

RFP作成成功のための実践チェックリスト

これらの失敗を避けるために、以下のチェックリストを活用してください。

作成前の準備段階

□ 現行システムの課題と解決したい問題を明確化している
□ システム導入の目的と期待効果を数値化している
□ 予算の目安を設定している
□ 社内関係者の合意を得ている
□ 現行システム構成図を作成している

RFP記載内容

□ 要求事項に優先順位を設定している
□ 曖昧な表現を排除し具体的に記載している
□ スコープ範囲を明確に定義している
□ 責任分界点を明記している
□ 現実的で実現可能な要求になっている
□ 評価基準と重み付けを明記している

提出前の最終確認

□ 第三者による内容レビューを実施している
□ 技術的妥当性を専門家に確認している
□ 社内承認プロセスを完了している

まとめ:RFP作成の成功が、システム導入成功の8割を決める

システム導入プロジェクトの成功は、RFP作成の段階でほぼ決まってしまいます。

今回ご紹介した10の失敗パターンは、多くの企業が実際に経験している「あるある」な問題です。

しかし、これらの失敗は事前の準備と正しい知識があれば十分に防ぐことができますよ。

特に重要なのは、「完璧なRFPを作ろうとしすぎない」ことです。

すべての要望を詰め込むのではなく、本当に必要な要求事項を絞り込み、ベンダーが提案しやすい環境を作ることが、結果として最適なシステム導入につながります。

あなたのシステム導入プロジェクトが成功することを心から願っています。

まずは今回のチェックリストを活用して、失敗のないRFP作成から始めてみませんか。

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